第5回高速ネットワークの将来は基板テクノロジーが握る“ハイバンドネットワークにおけるパッケージのトレンド”
連載・次世代パッケージ 2020 第5回
○広帯域ネットワークの技術トレンド
○現行のFCパッケージが限界迎える
IoT時代においてデータ処理の高速化はサーバー、PCおよびスマホなどのモバイル機器の性能アップに加えてインターネットをつかさどるネットワークの通信速度の向上が重要であるのは言うまでもない。
AvagoがBroadcomの合併は半導体売上規模で昨年それぞれ14位、8位であった企業の大型合併でネットワークマーケットの制覇をねらう。Ethernet用ICで圧倒的に強いBroadcomとPHYや光変換モジュールに強いAvagoの合併で、ネットワークの主要なICのマーケットをおさえる。
さらにAvagoは高周波帯域のLTE-Aから5Gに向けてRFのFront end部分が高周波になるつれて、村田製作所やSkyworksなどに対しても次第に競争力を見せている。BroadcomもWiFi、BluetoothのコンボICでの評価は高く*、WiGiと5Gモバイルとの融合が予定される中で、Ethernetと合わせてRFも含めたネットワーク全体を手中に収める大きな野望が見える。(*村田製作所のWiFiモジュールもBroadcomのICを採用している。)
Ethernetに加えてそれをコントロールするASICやFPGAは、FC-BGA(FC)の大きなマーケットである。Ethernetのポート数によりパッケージサイズは大きくなり、大きいものでは50mmにもなり、さらに高速信号を扱う事からCPU以上に要求レベルの高いFCである。
現在のデータセンターのEthernetの中心は40GbEで、すでに100GbEが使用され始めている。Ethernetの性能はポート当たりの転送速度Xポート数で決まる。100GbEに対しては10Gbsx10ポートにすれば現在のビルドアップ材料のFC-BGAで対応できるが、25Gbsで実現するためには信号伝達ロスを大幅に改善する必要があり、次世代の材料カテゴリーとして誘電正接(Df)を半分以下にする必要がある。
5Gの運用開始がされる時代にはさらなるデータ転送速度の向上が必要で、2017年には400GbEの規格が制定される予定になっている。400GbEに対しては今までのシステムグレードアップの流れでは、50GbsX8ポート構成が望ましいが、50Gbsポートについて25Gbsポートをやっと達成しようとしているFC世代では対応できない。さらに半分以下のDfが必要で、それはテフロン材料以下を意味する。材料特性を含め従来のFC構造の限界が迫っている。
現在フォトニクスの開発が急がれているのにはこの背景も大きい。フォトニクスにより光フラットケーブルでICチップ直前まで配線しようとしているのはもはや基板上で50Gbpsの配線を可能な限り短くする必要があるからである。しかし高精度な光コネクションや光変換のデバイスを一体化する3D構造などまだ多くのチャレンジがある。
次にバックホールにおけるパッケージテクノロジーを見てみる。LTE-Aから5Gへ向けて、高周波帯域の電波を使う事で、電波到達距離が短くなりフェムトセルやピコセルと呼ばれるスモールセル(基地局)の設置が進む。企業内部においてもWiGig及び5G通信との共有使用としてのフェムトセル設置が急増する。WiGigの60Ghzは壁を通せない事を考えると驚くほどの設置数になることが予想される。スモールセルにおいてはRF Front endからベースバンド(BB)を経由してAP、さらにそのデータはEthernetによりバックホールネットワークに接続される。これらのパッケージはすべてFC-BGAを前提とするので、FC-BGAのマーケットの急速な拡大となる。データセンターが400GbEが開始されれば、バックホールも100GbEの時代になり、FC-BGAも新世代材料を要求される。さらに、RF-BB-APの2.1D構造はスモールセルの小型化、低コスト化から検討されるべき課題である。
Ethernetの中継部分においてはパケットバッファーのためのコントローラが必要になるケースが多くあり、400GbEに対してはHBMの使用検討されるほどの広帯域メモリーが必要*(*2017年規格制定を待つ必要がある)とされている。2/2um L/Sレベルの2.1D構造に加えて25Gbps以上の信号を扱う、次世代パッケージは基板テクノロジーに委ねられている。CPU用のパッケージがモバイルもサーバーもホットな話題になっている中で、ネットワーク性能向上を握るパッケージも新しい世代に入ろうとしている。